『文とは何か』を読んでみた

今回のブログは、橋本陽介・著『文とは何か』を読んだ感想が主となります。
もし、私の理解が間違っていたら指摘して欲しいです。

さて、f:id:ysandesuka:20200904220608j:plain

を買ってみました!

届いたのは既に何週間か前で、3時間程度で読み終わりました。内容は、新書タイプにも関わらず様々な言語学の分野がおさえられており、尚且つ分かりやすいですね。

私自身が、日本語学を専攻しているというのもあって、言語学・日本語学をこれから始める人に入門書(入門書と言っても難しいものが多い)の前に1度読んでおくことをオススメしたい内容でした。

(上から目線のようになって申し訳ないです)

さて、私はある大学に在籍しているのですが、日本語や日本文学を専門的に扱う大学にいてもどうしても【文法】というものが苦手な人が一定数います。況や一般人をや、ですね。

少し日本語学・国語学に触れたことのある人ならば分かると思いますが、現在のいわゆる学校文法は様々な問題があります。

この本の「はじめに」でも指摘がある通り、古文を学ぶには非常に実用的で、もしも古文に興味があるのならば非常に役に立ちますが、そうでなければ役立たず。
非常に厳しいですが、現代日本においては現代語の学校文法を学ぶ意味は日本語ネイティブの、しかも古文を必要としなくなってしまった私たちには無意味に近いです。勿論、第二外国語を学ぶ時に、文の構造を知っておくことが役に立つことはありますが。

しかし、私も常々思うことですが、「文法」はとても楽しいのです。これはほんとに。

少し本の紹介からはズレますが、言語を理解することは世界を理解することを示します。そして、私たちは言語を操る際に「文」を作り出すわけです。その「文」をどのように見るのかによって、研究の対象は変わります。(語の意味を見るのか、音を見るのか、文全体を見るのか…etc)
そして、その「文」には一定のルールがあります。それが、「文法」ですね。

音と意味には必然的な結び付きはありません。下の絵は、四本足で歩くあのみんなが大好き、ネコ目-イヌ科-イヌ目の哺乳類です。私たちはこれを日本語で、「inu」と呼びます。ここで、「inu」という音の並びがどの言語であっても、その哺乳類を表すのならば音と意味の結び付きには必然性があると言えますが、そんなことはなく英語ではdogですね。

(一応「犬」のつもりで描きました。見えますよね?)

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語彙の面から見ると、「音と意味」というのは恣意的です。しかし、文という面から見るとそこには一定のルールがあります。それが「文法」な訳ですね。(大事な事なので二回…)

オラわくわくしてきたぞ!って感じですよね!
分からない方は、是非この本を読んでみましょうね。

この本の詳しい内容は、是非買って読んでください。Kindle版でも出ているようです。とは言っても、少しは中身に触れておかなければこのブログの意味はなくなりますので、軽く触れていきましょう。

「文とは何か」というタイトルの通り、「文」って何なの?という所が一番の主題になります。この問いは、「第一章 「文」とは何かという根源的な問い」という所で詳しく説明されていきます。
新書ということで、かなり一般の方向け、しかし国語教師になりたい方などにも実に有用な内容な気がします。「品詞」って何だっけ?「格」って何?「文成分」?というような基礎的なこともしっかり丁寧に解説してくれています。

よくTwitterでも話題になりますが、「日本語に主語という概念は不要だ」というような言説を見かけます。
なんかそんな気はしてきますよね。普段話している時、普通にないことはありますからね。ほら、今もなかったですよね?

しかし、私たちは「主語」を認識しています。さっきの文の主語は「主語」ですよね?なるほど、論理的には存在するけれど省略されているのか。もしくは、隠れているのか、というようなことを考えたくなる。

(例)
(主語が)普通にないことはありますからね。
ほら、今も(主語が)なかったですよね。

(もっと良い、適切な例文は本に書かれています)

では、論理的に存在するってどういうこと?となりますよね。そもそも、「文の論理」って何なの?とかいう疑問も浮かびます。

このように「文」には「主語」があるかないか。論理的には存在して、省略されていると考えることをこの本では、「「文」だけで世界と対応させようとする発想」とします。

……などが語られていくわけですね。また、生成文法認知言語学、語用論などにも触れています。私は専門では無いのであまりその内容で良いのかということはわかりませんが、そのような分野があると知るには良いかもしれません。

本を読んでいて、ある演習にて先生から

「何故主語は要らない時があると思いますか?」

という質問をされたことを思い出します。若干うろ覚えですが、

「文脈が存在しますよね」

という方向で先生が語られていたのを覚えています。
文というものを文脈から切り離して考えることも有用です。しかし、私たちは言語を扱う際には何かしらの文脈が存在します。(それは、例えば場所でも良いし場面でも良いし、時間でも良い)
そのような文脈の中で、私達が言語を扱っているということは必ず念頭に置いておくべきですね。

さて、こそこそと語ってきた訳ですが、私がこのブログで紹介したのはほんとにこの本の一部にも満たない所です。恐らく紙面や想定する読者層の関係によって、どこまでも深くというようなものではありませんが、この本を読むことで深くまで潜るヒントを得られることは間違いないでしょう。

お値段も内容から考えるとタダ同然ですね。

注意点としては、入門書の入門書のようなものであるということです。本に書かれていることが必ずしも正しいとは限りません。深く学ぶ中で様々な思考に至ると思いますので、あくまでも言語学という学問に気軽に触れられるひとつの手段として読むことをおすすめします。

Twitterもやられているようなので、フォローして最新の情報もチェックすることをオススメします。

【橋本陽介氏Twitter
@qiaoyang915

【以下、「文とは何か」Amazonリンク】
https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E6%96%87%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B-%E6%84%89%E3%81%97%E3%81%84%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E6%96%87%E6%B3%95%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%97-%E5%85%89%E6%96%87%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%A9%8B%E6%9C%AC%E9%99%BD%E4%BB%8B/dp/4334044883