プリント倶楽部なる奇怪

ある日、ある日と言っても今日なのだが、プリント倶楽部なる奇怪な機械に入る機会を得た。流石にひとりで入った訳では無い。嘘か誠か、市井の噂によればこの機械には男だけで入ることが許されないらしい。が、私は幸いにも恋人が共に居たために咎められることも無く無事に入れた。

プリント倶楽部は写真を撮ることを仕事とするのだが、どうやら単に写すだけではないらしい。写真を撮ると魂が抜かれる、というのはよく知られた事実だろうが、この機械で撮った絵はまさに絵であって写真ではないように思われる。どうやら、プリント倶楽部で多く写真を撮るおなごが生きている訳は、これが写真ではないということに求められるようだ。

この機械は先に述べたように正に奇怪で、私に対してあれやこれやとポーズを指示してくるのだ。やれ指でハートを作れだの、やれ顎に指を付けろなどと指示してくるが、22歳で初めてこのような機械に入った私にはどうも恥ずかしい。恋人がいる手前やらないという選択肢はなかったが、よく分からない格好をしている自分を見せられ、撮ったものは絵のような、決して私では無いものが出てくるのだから、恐らくあれを作った人間は底意地悪い。

しかし、案外にも楽しかったということもまた事実だろう。年甲斐もなくワクワクしてしまった。新しいことをこの歳になってしれたのだ。知らねばならないことではあるが、にしても知ることは極めて楽しい。

プリント倶楽部に入ったことのない人がどれほどいるかは分からないが、1度は入ってみると良い。魂を抜かれることは無いからどうぞ安心して欲しい。